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「発信することがない」なんてことはない! #等身大の企業広報 イベントレポート

SNSやオウンドメディアによって、企業における情報発信の手段は増えました。ただ、情報過多になり、本当に届けたい人に届きづらい状況になっているのも事実。情報発信があたりまえになったからこそ、やり方を模索している企業も多いと思います。

情報発信の方法が日々アップデートされる現代において注目されているのが、等身大、つまり企業の実体や本音を着飾ることなく、ありのままに届けるという手法です。

今回noteでは、「等身大の企業広報」と銘打って、オウンドメディアを活用して先進的な広報活動をしているニトリ、LINEの担当者を招いたセミナーを開催しました。「そもそもうちの会社には、発信するような情報がない」「情報発信のたいせつさは理解しているけど、どうやればいいのかわからない」という広報・人事担当の方、必見です!

なぜ企業がオウンドメディアで情報発信するのか

ー まず、それぞれのオウンドメディアの概要と目的をお聞かせください。

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永島さん:ニトリでは、2020年から「ニトリン」というオウンドメディアを運営しています。カテゴリは「カルチャー」「キャリア」「社員教育」「モノづくり」で、2020年12月時点で60記事ぐらいが掲載されています。ニトリンの目的をお話しする前に、ひとつ質問させてください。ニトリにはどういうイメージがありますか?

ー ええっと、“郊外で存在感のある駐車場一体型の店舗”ですか?

永島さん:ですよね。そのイメージは間違いないんですが、人事としては「”大きな家具屋”以外のニトリを知ってもらいたい」という気持ちが強くあります。ひいては採用ブランディング、インナーブランディングの効果も期待しています。

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永島寛之さん
株式会社ニトリホールディングス 理事/組織開発室室長
1998年東レ入社。法人・海外営業に従事し、2007年ソニーへ。2013年ニトリ入社。店長、採用責任者を経て2019年3月より人事責任者へ。組織開発室室長として、オウンドメディア「ニトリン」の運営を担当している。「個の成長が企業の成長」という考えのもと、グロービス学び放題永年契約やタレントマネジメントシステムの導入を決定し、テクノロジーを駆使した「多数精鋭教育」の実現に向け指揮を執る。「越境好奇心」の育成がテーマ。
note:https://note.com/hugo
Linkedin:https://www.linkedin.com/in/nagahirox/

ー というと?

永島さん:あまり知られていないのですが、ニトリはグローバリゼーションを推進していたり、テクノロジーを活用した商品を開発していたり、じつは内製化していて80%がプライベートブランド商品だったり……特徴的な取り組みをしています。小売だけではなく製造、物流、ITなどニトリにはさまざまな顔があるわけです。当然職種も多彩。たとえば「インテリアメーカーで働きたい」という想いにも充分に応えられます。

ー 確かに、“メーカーとしてのニトリ”を知らないひとは多そうです。

ところが、就職活動は業界軸で検索するから、メーカー志望の学生がニトリにたどりつきにくい。かといって、「住まいの豊かさを、世界の人々に提供していきたい」「2032年までに3兆円企業になりたい」と大きなメッセージを発信しても理解してもらえない。だから、ニトリンでは“ひと”にフォーカスし、世の中の理解を測っていきたいと思っています。社員一人ひとりにフォーカスして、メッセージのリアリティを高めていくことが狙いです。

ー ありがとうございます。続いては、LINEの河村さんお願いします。

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河村有紀さん
LINE株式会社 コーポレートコミュニケーション室
Employee Communicationチーム マネージャー
2010年、LINEの前身であるネイバージャパンに入社。LINEをはじめとする複数アプリ・サービスの広報、企業広報全般を担当。現在は、インターナルコミュニケーションを担当しながら、SNSやオウンドメディアを通じて、LINEのカルチャーや社員の魅力を発信。
オウンドメディア:OnLINE
Twitter:LINE株式会社 Facebook:LINE株式会社

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河村さん:わたしたちが運営しているのは「OnLINE」というオウンドメディアです。オウンドメディアが大好きな会社なので、各サービスごと、部署ごとにオウンドメディアを運営しているのですが、OnLINEは企業全体の情報を発信しているものです。更新頻度は、月に2〜4記事ぐらいですね。

ー どういった目的でスタートしたのでしょうか?

河村さん:目的は、LINEのバリューである「WOW=No.1」をお伝えしていくこと。つまり「驚き」と「1位」をつくっていくことがわたしたちが目指しているところです。詳細は、どなたでもダウンロードできるLINE STYLE BOOKにまとめています。WOW=No.1のウラ側にある社員たちのチャレンジをお見せするサイトが、OnLINEという位置付けですね。体制としては、わたしが所属している「Employee Communicationチーム」という社内広報チームに加えて、採用チームのメンバーにもジョインしてもらい、企業広報と採用広報の2つの視点で運用しています。

まずは、社内に仲間を見つけよう

ー 両社ともにひとを通じて「伝えたいけれど伝えられていないウラ側」を発信している印象です。

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モデレーター:徳力基彦(noteプロデューサー)

永島さん:ニトリンは後発だから、OnLINEに似てしまったのかもしれないです(笑)。

河村さん:いやいや(笑)。実は過去に、ユーザーから「LINEというサービスは知っているけど、つくっているひとの顔が見えない」と言われたことがあります。確かに、社員のことやウラ側にあるストーリーは発信していかないと伝わらない。じつはOnLINEリニューアル時の企画書に書いたキーワードが「LINEの透明化」で。「LINEはいつでもウェルカムなので見てください」という状態を、OnLINEを通じてつくりたいと思っています。

永島さん:ニトリの場合は、さらに採用にも力を入れています。以前宇宙工学を学んでいた学生がニトリに内定したことをゼミの教授や大学のキャリアセンターに伝えたら「なぜ宇宙工学を勉強したのに、家具屋に?」と反対されたそうです。でも、実際宇宙工学を学んだ学生が活躍できる可能性はあるんですよ。そのあたりのイメージを払拭していきたいと思っています。業界のイメージ先行で機会損失が起きるのは、もったいないので。

河村さん:LINEも、ニトリとよく似ています。わたしたちもコミュニケーションアプリのLINEだけではなく、「LINE Pay」のような金融サービス、「LINE LIVE」「LINE MUSIC」のようなエンターテインメントサービス、さらにAIの開発研究なども幅広く手がけているわけです。そのため、IT系の人材に限定せず、銀行、テレビ局や出版社など幅広い分野の方が中途採用ではターゲットになる。

永島さん:確かに。

河村さん:そうなんですよ。その場合、採用担当者が「じつは、こういう経歴のひとを探しています」と発信するよりも、サービスをつくっているひとたちが「ぼくらはこういう経歴で、こういう想いでつくっています」と伝えたほうが、伝わるメッセージが大きいし、信頼度も全然違います。情報発信を通じて、LINEの本当の姿を伝えていきたいですね。

ー 「ひとを出す」という手法は、採用パンフレット、採用ホームページの時代から使われてきましたが、近年はSNSによってリスクが生じる可能性も出てきました。「ひとを出す」ことについて、社内から反対意見はありませんか?

河村さん:LINEには、反対するひとはほとんどいません。もちろんリスクがあることは承知していますが、発信しないことによるデメリットのほうが大きいと思っています。

永島さん:ニトリも反対意見はほとんどないですね。ただ、反対したくなるひともいることを想定して、ニトリンの目的や記事のつくり方などは何度もすり合わせするようにしています。もしかしたら、海外展開以前だったら反対意見は多かったかもしれませんが、垣根を越えて、外とつながって、価値を理解してもらうことの大切さに気づき始めた人が増えてきたように感じています。

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ー オウンドメディア運営において、社内で味方が増えていることはすごく大事ですね。

永島さん:いまでは各部署のひとたちもニトリンでの情報発信の必要性を感じていると思います。たとえばIT部門では、エンジニアを採用するために「基幹システム含めてすべて自社で開発している」とアピールしたいと思っているひとは多いはず。きちんとオウンドメディアのメリットを享受してもらえれば、社内の協力を得やすいと思いますね。

河村さん:すごく共感します。オウンドメディアは社外向けのものなので、つい“外”を意識してしまうのですが、最初にすべきは「社内に仲間をつくること」なんですよね。OnLINEも現在は広報チームと採用チームのメンバー4名で編集部というカタチをとっていますが、リニューアルの際にはウェブディレクターやデザイナー合わせて10名ぐらいのチームになりました。

ー どうやって仲間を集めるんですか?

河村さん:まず広報チームから、採用チームに「自社の情報を集約する場所が必要だよね」という話をしました。「確かに」と同意を得られたので、ここでひとり仲間をゲット。そこから周辺に仲間の輪を広げていって、次は上司に話を持っていって……という流れです。地道に一歩ずつ。徐々に「こういう記事を書いたからOnLINEに載せてほしい」という声も寄せられるように、どんどん社内で仲間が増えていきました。

定量目標ばかり追いかけていると、つまらなくなる

ー 少し軸を変えて、ニトリンとOnLINEの効果測定についても教えてください。おそらくみなさん気になるポイントだと思います。

永島さん:結論から申し上げますと、ニトリンでは細かなKPIは決めていません。以前は、Googleアナリティクスとにらめっこしながら記事数やPV、キーワードごとの検索順位などをチェックしていたんですが、だんだんとつまらなくなってしまって(笑)。経営陣に報告しなきゃいけないから数字は欲しくなるんですが、じつはKPIを目指していない状態をつくっていくことのほうが大事で。もちろん何かしらのKPIは必要なのかもしれませんが、会社ごとに自分たちが本来やりたかったことを表す指標を探していくことが大切なのではないでしょうか。

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河村さん:LINEもまだまだ模索している状態ではありますが、定量と定性の両方を見ています。具体的には、PV、UU、滞在時間、来訪者ひとりあたりが読んでいった記事数、読了率などですね。ただ、目標数字は置いていません。8年やってきて、Googleアナリティクスの数字だけではOnLINEの成果が説明できないことがわかったので。

ー それが、定性の部分ですね。

河村さん:そうですね。具体的には、採用の場面でものすごく価値を発揮しています。たとえば、採用チームから「選考を受けた方が事前に職種の情報や働き方について、募集要項には書かれていない情報をOnLINEでチェックしてくれるので、面接で大枠の説明を省いてより深い話ができた」という話が出たことがありました。そういう部分は数字では測りきれない部分ですよね。だからこそ、定量だけではなく定性も含めた二軸で見ていくべきだと感じています。

ー 定量と定性のバランスは難しいですよね。デジタルマーケティングは効果が数字で出やすいので、つい引っ張られる。公式Twitterも“おもしろ投稿”に振り切りすぎるあまり、つい踏み外して、炎上してしまって……定性が大事なのはもちろんわかるんですが、指標の見つけ方に悩んでいる方は多いと思います。

永島さん:あくまでも一例ですが、「社内会議で話題になるかどうか」は大事だと思います。「ニトリンで取り上げてもらって、こんな記事になりました」とか「◯◯というタイトルの記事、読んだよ」とか。ニトリンの言葉が一人歩きしているかどうかは、社内で耳をすませてチェックしています。オウンドメディアなので社外向けにやってはいるんですが、社内から反応があると嬉しいですよ。

河村さん:確かに、社内で反響が出ると嬉しいですよね。LINE社内のコミュニケーションチャットでOnLINEの話題になると「ちゃんと読んでもらえている」とホッとします(笑)。

ー ニトリさんの効果測定における興味深いエピソードがありました。永島さん、解説していただけますか?

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永島さん:以前は新卒採用に苦労している時期もあったんです。ただ、最近はニトリンをはじめとするさまざまな活動の甲斐あって、人気企業ランキングで上位にランクインされてあり、「親にニトリのインターンを勧められた」という学生がいたり……というケースも増えてきて。

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永島さん:特に印象的だったのが、併願される企業が変わってきたことです。いままではずっと小売業が併願の対象だったのですが、最近は金融やITと併願してもらえるようになってきて。あらためて、見えない部分を見せていくことのたいせつさを実感しましたね。

小さくても、一歩を踏み出そう

ー “数字では測れない部分”を追求するために工夫していることはありますか?

河村さん:社内に転がっているおもしろいネタを逃さずにピックアップしていくことです。先日、新入社員が先輩男性社員に育休事情を聞くイベントを開催するという情報を入手したので、すかさず取材して記事化しました。

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河村さん:新入社員が育休に関して気になっていることを先輩男性社員にぶつけるイベントだったのですが、テーマ的に興味を持つ方は社内外問わず多いはず。だから、迷わず記事化に踏み切りました。これからの働き方のことを考えている新卒新入社員の同世代の方たちには共感してもらえる内容になったと思います。

永島さん:採用パンフレットや採用ホームページに記載したら「男性育児休暇制度あり(取得実績:◯名)」と一行で終わる内容ですよ。オウンドメディアだからこそリアリティがありますね。

ー 新入社員のみなさんが、社内でこういうイベントを企画すること自体すごいですね。きっと彼らにとっても「こういうことをやったらOnLINEが取り上げてくれる」と次の企画を考える原動力になるし。オウンドメディア担当者はつい自分でゼロから企画を考えなければいけないと思いがちですが、取材に行けばいいんですね。ニトリさんはどうでしょう?

永島さん:工夫している点としては、記事のコンセプトである「だれになにを語るのか」「だれにどういう行動を促したいのか」を決めることです。社内外のいろいろなひとに読んでもらいたいので、コンセプトが決まっていないとふわふわしちゃうんですよね。特に意識しているのが、IT系の記事ですね。「大勢に読んでもらいたい」と思って記事をつくると、読んでもらいたいひとがわからなくなる。「このひとに読んでもらえたらOK」と絞り込むことは重要なテクニックだと思います。

河村さん:LINEでも、各職種で自分たちの仕事の仕方を語っている記事があるのですが、逆にその専門の職種の方たちさえ理解できればいいので、専門用語はそのまま載せていますね。

ー 採用パンフレットや採用ホームページだとだれが読んでもわかる書き方をしなければいけないから、全体的に初心者向けになってしまいますもんね。深い話を掘り下げていけるのは、ウェブの記事ならではだと思います。では、こういった切り口のいい企画が社内から生まれるためにはどうすればいいと思いますか?

永島さん:やはり環境は整えなくてはいけないと思います。ニトリでは、翌年の新入社員研修をつくる際、現場の2〜3年目を集めて期間限定のチームを組んだり、商品開発コンテストを開催したりしています。メイン業務を担当しながらサブ的な業務も兼任することで、ニトリの仕事におけるコアな部分を肌で感じてもらうことが狙いです。コアを知れば、アイデアも考えやすくなりますからね。「自立しなさい」「アイデアを出しなさい」という精神論だけでは限界があるので。

河村さん:LINEだと、先ほども触れたように「透明化」が大きなキーワードですね。そのためにすべきことは、現状試行錯誤しながら実践しているところです。変に着飾る必要はない。自分たちの言葉で会社のことを伝えてくれるひとが増えれば、自ずと透明化していくと思っています。

ー お互いになにか聞いてみたいことはありますか?

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河村さん:ニトリンの運営を内製化している理由を教えてください。

永島さん:外部のライターさんやカメラマンさんに頼むと、テイストが変わっちゃうんですよね。「書いてあることは間違っていないんだけど、なんか違う」みたいな。だからニトリンは完全に自前で運営しています。オウンドメディアは、少し手づくり感が残っていたほうが愛着を持てて信用してもらえるような気がしますからね。

河村さん:編集部のメンバーはどのように集めていけばいいと思いますか?

永島さん:基本的には会社への想いが強かったり、好奇心が強かったり、心から伝えたいことがあったりするひとを集めています。とはいえ、3年ぐらいで配置転換していくので、そういう社員を探し続ける生活ですね。

ー ありがとうございます。では最後に新しい企業広報を目指すにあたり、明日から気軽に始められるアクションがあれば教えてください。

河村さん「一歩踏み出す勇気」に尽きます。先ほどご紹介したLINE STYLEの項目にもあるのですが、一歩踏み出さなければ社内の仲間も見つけられないので。わたしたちも悩みながらチャレンジを続けている最中です。キーワードは透明化。でも、変に着飾る必要はないと思っています。自分たちの言葉で会社のことを伝えてくれるひとが増えれば、自ずと透明化していく。こういう場で悩みを相談しながら、一緒にがんばっていけたら嬉しいですね。

永島さん:ぼくらはニトリンを始める際に、「会社の好きなところ」「世間に知ってもらいたいところ」をホワイトボードに書き出したんです。それで、ホワイトボードがいっぱいになって、「これだけあるならオウンドメディアができるだろう」というところでスタートしました。書き出して置いておけば、「何かやらなきゃ」というプレッシャーにもなるんですよね。ぜひ積極的に書き出してみてほしいですね。

ー 「一歩踏み出す勇気」、すごい大事ですよね。情報発信にチャレンジしてみたら、意外とカンタンだと感じることもあると思うので。おふたりのお話が、なにかしらのヒントになっていれば幸いです。今日はありがとうございました!


法人の情報発信事例についてより詳しく知りたい方は、こちらのセミナーにもご参加ください。

Text and Photo by 田中嘉人




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