エンジニアからのEMやPdMってどうですか?マネジメント職になった二人にキャリアと働き方について聞く
エンジニアとして経験を積んでいくなかで、「いつまでプレイヤーとして働くのか」という問題に悩む方もいるでしょう。(かつては「プログラマ〇〇歳定年説」という言葉が流行ったこともありました)
noteではこれまで、エンジニア全員がプレイヤーとして開発を続けてきました。しかし、プロダクトの規模も拡大して、社員の人数が多くなってきたこともあり、マネジメントに特化したエンジニアの力が必要になりました。キャリアとして、プレイヤー以外の選択ができるフェーズに入ってきたのです。
そしてそれに先駆けて、開発リーダーを務めていたエンジニアの二人がEngineering Manager(以下、EM)とProduct Manager(以下、PdM)にそれぞれキャリアチェンジを行いました。
もしかしたら、マネジメント職についてしまうと、コードが書けなかったり、会議が増えたりしてしまうため、ネガティブな感情を抱いてしまう人も中にはいるかもしれません。
では、noteでのマネジメント職は、どのような働き方をするのでしょうか。今回はエンジニアからEMになった福井さん、PdMになった石坂さんのお二人に、働き方とキャリアについてお聞きしました。
組織改編によるキャリアチェンジ。戸惑いはなかったのか
― それぞれエンジニアからマネジメント職にキャリアチェンジをしましたね。キッカケはなにかあったのでしょうか?
福井 烈(ふくい たけし)
2015年5月にnoteに入社後、2015年6月より青森県からのフルリモートで勤務をしている。現在は開発3課のリーダーとエンジニアリングマネージャーを兼務。Twitter / note
福井:そもそもは、開発チーム全体を再編するという話が、今年の2月に出てきたことがキッカケです。そのときに「EMとPdMは必要だ」という意見はよく挙がっていました。
石坂:EMもPdMも外部から採用しようとしていました。しかし、外から入ってきた方にすぐ活躍していただくためには、かつ社内の誰もが「この人なら」と認めるようなシニアレベルでないと難しいだろうと思っていたので、なかなか採用に結びかない状態でした。
福井:正直、私はEMに少し興味はあったんです。だけど、経験も自信もなかったので手を挙げられなくて(笑)
― 社歴が長く、開発チームのリーダーも担っていた福井さんでもそのような気持ちになるのですね。
石坂:当時議論していたメンバーの中では「福井さんしかいない」という結論になっていました。EMとして求められる能力はさまざまにありますが、noteとしては「相談のしやすい人当たりの良さ」「noteの文化を深く理解している」という部分は重視する方向でいたので。それらを考えると、福井さんが適切でした。もちろん、技術力についても申し分ありませんし。
福井:EMの経験がなかったこともあり、指名されたときは迷う部分もありました。しかし、同僚からの「チームリーダーとEMでやることは変わらないですよ。俯瞰的に見る部分が増えるだけで」という一言で気持ちが楽になりました。それなら自分にもできるかもな、って。
― 実際にキャリアチェンジして、心の変化などはありましたか?
福井:アドバイスをもらったとおり、チームリーダーとやることの本質は変わりませんでした。話す対象のひとが増えたくらいでしょうか。いろいろなチームのミーティングに出て、初めて話すひとも増えたため、より大局で組織をみられるようになった気はします。
― 石坂さんも同じように指名があって、PdMになっていったのでしょうか?
石坂 優太(いしざか ゆうた)
大手メーカー、人材系ベンチャーなどを経て、2019年5月にnoteへ入社。現在はプロダクトマネージャーを務める。Twitter / note
石坂:私の場合は厳密に言うと少し違います。CEOの加藤さんから「石坂さんにPdMをやってもらえば?」という意見がでていたことを、間接的に聞きました。それを知ったときに「noteの今の状況やチーム体制を考ると、PdM経験のある自分がやるのがいいかもな」と思い、引き受けることにしました。
― 「今の状況やチーム体制を考えて」とありましたが、なぜnoteにはPdMが必要だったのでしょうか?
石坂:もともとは加藤さんや深津さんがPdM的なポジションを担っていて、開発の意思決定を行ってきました。しかし、プロダクトの規模も拡大して社員数も増えるにしたがって、意思決定を求められるシーンが多くなってきました。このままだと、二人の負担が増え、意思決定の速度も遅れ、開発サイクルも回らなくなってしまいます。
そこで、意思決定の速度をあげることと、負荷を分散する意味も含めて、PdMを誰かに任せるべきだろうという話になりました。
― 会社として必要であるうえに、石坂さんの能力がマッチしたからこそ、自ら手をあげたんですね。
石坂:社内の中で考えれば、経験値的にもPdMを自分がやるべきかなとは考えていました。これまでの会社でも、ずっとマネジメントを経験してきていて得意な分野ですし、自分自身もバリューを発揮しやすいかなって。マネジメント職には縁があるのかもしれません(笑)
「コードが書けない」「会議が多い」などの不満は生まれない?
― マネジメントする立場になると、必然的に会議や話し合いが増えると思います。そこをネガティブに感じるひともいそうですが、お二人はどうでしょうか?
石坂:会議は正直言って多くなりました。今はまだ、PdMとして立ち上げ期で情報収集をする必要があるため、色んなチームに顔を出しています。一日ずっと会議のときもありますが、そこに不満はないですね。
福井:会議は、目的とゴールが明確であれば多くてもいいと思っています。誰だって、意味のない会議をやりたくない(笑)
石坂:会議が多くなってしまうのは、組織構造と情報流通のプロセスが適切ではないからです。なるべくみんなの会議を減らして効率よく働けるようにしていくのも、私の仕事の一つだと考えています。私自身の会議も一時的に増えている状態にありますが、すでに減る兆しは見えています。
福井:エンジニアの会議はなるべく減らしていきたいですね。クリエイティビティを最大限発揮するためには、集中できる時間を長く保てるようにすることが大切だと思っているので。エンジニアが立ち回りやすいように、裏側で私たちが動いて調整していければいいなと。
― 「もっとコードを書きたい」というような欲求はありませんか?
石坂:ほとんどありません。今まででマネジメント職をすることも多かったですし、事業を成長させるためならポジションはあまりこだわらないタイプなので。
福井:私は逆ですね。今は違いますが、はじめて開発チームのリーダーを任されたときは、自分で手を動かしたい欲求はありました。メンバーの評価などにも力を入れなければならなくなり、コードを書く時間が減ったときは「正直、おもしろくないなぁ」と感じる部分もありました。
― はじめは、あまりマネジメント職に乗り気じゃなかったんですね。
福井:前職まででマネジメントの経験をしておらず、自信がなかったのも一つの要因だと思います。「自分から望んでリーダーをやった」というよりは、「組織として必要であればやる」という感覚だったので。
― そこからどのようにマネジメントを楽しめるようになったのでしょうか?
福井:悶々としていた時期に、他社でマネジメントをしているエンジニアの記事を読み漁ったことで、視野が広がった感覚はあります。それまでは、「マネジメント=管理」という固定観念が自分の中にありました。彼らのやり方を実践していくうちに、マネジメントの楽しさがわかるようになりました。
福井:マネジメント職は、自分の判断や展開で局面を変えられますし、チームでベストだと思う意思決定を導く必要があります。そこにプレッシャーを感じることもありましたが、「自分が開発のすべてを知る必要はなく、チームの中で誰かが理解できていれば組織は回っていく」ということに気づいてから、自分をチームの中心に置く意識がなくなって気持ちが楽になりました。そこからマネジメントを楽しめるようになったのかなと思います。
石坂:開発を自分とおなじレベル以上でできるエンジニアは、今のnoteにはたくさんいますしね。事業がもっと成長していくためには、それぞれが適切なポジションで働いていく方がいいだろうなとは思います。
福井:数年前までは、コードを書いて自分で機能を作ることにこだわりがありました。しかし、今は自分が直接実装しなくても、間接的にアシストすることでチームの力を最大限に活かし、noteをグロースさせていくことに楽しさを感じています。
noteにおけるEMとPdMの働き
― 組織や会社のフェーズによって、マネジメント職は役割が変わってきます。現在のnoteではそれぞれどのような役割をされているのでしょうか?
石坂:noteにはPdM職が大きくわけて2種類あります。PdMとして自分の担当ごとにチームを持つタイプと、それらの開発チーム全体を俯瞰して組織と戦略を考えるタイプです。私はその後者にあたります。
― 具体的にはどのようなことをしていくのでしょうか?
石坂:戦略的に「どの領域でどのくらいリソースを使うと事業がうまくいくのか」という部分を考えて、組織に落とし込むことが中心の業務です。もともと私自身がエンジニアだったこともあり、各PdMへの技術的な面でのサポートや、開発チームとそれ以外のチームの連携なども行っています。
― 石坂さんが全体を見るような編成なんですね。
石坂:私以外のPdMは、それぞれに与えられた目標があります。それを達成するために、エンジニアやデザイナーと一緒に施策を考え、リリースまで担当します。私は逆に、具体的な施策を自分で実行していくことはあまりありません。例えば「クリエイターのコンテンツがもっと多くの人に届くようにすることが重要。そのためには、こんなチームをつくってこの目標と戦略を設定しよう」というような、一つ上のレイヤーで組織を考えています。
― noteにおけるEMの働き方はどうでしょうか?
福井:大きくわけて、外向きと内向きの2つのアプローチがあります。外向きの業務はエンジニアの採用などに関わる人事面についてです。エンジニアによるPodcastの配信やインタビュー記事の相談など、外部に向けた発信を行っていくのが外向きの業務です。内向きの業務は組織やチーム編成についてです。組織のボトルネックを見極めつつ、施策を提案し改善していくことが主な役割です。
― エンジニアが働きやすい環境を作るというイメージでしょうか?
福井:まさにそうです。みんなが働きやすい環境にするために、道を整備してゴミ拾いをしているイメージでしょうか。業務においてスムーズにできていない部分があれば、私が動いて解決していく形になります。エンジニアのためにできることがあれば、必要なことはすべてやっていくつもりです。
― 福井さんがEMを行う前は、組織やチーム全体は誰が見ていたのでしょうか?
福井:CTOの今さんが見ていました。今さんは技術面でも、組織面でもすべての業務を担当してて、かなりのタスクを任せてしまっていました…。
石坂:いかに今さんの負担をなくすのか、というのも組織編成するときには考慮していましたね。
福井:そうなんですよね。そのために今回からは、組織面は私が見て、技術面は今さんが見ていく、という役割分担になりました。
キャリアは考えず、自分がバリューを発揮できることに全力を尽くす
― 今後のキャリアについてはなにか考えてる部分はありますか?さらにポジションを変えていきたい願望などありますか?
石坂:あまりキャリアについては考えないタイプなんですよね。そのときに「やりたい」と思ったことと、一番バリューが出せそうな業務をやってきただけなので。
福井:私もほぼ同じ考えです。1年くらい先の目標は自分の中で決めることはあるけれど、何年後かのキャリアまでは考えていないタイプですね。
石坂:そもそも入社するときにも「noteを成長させるためなら、エンジニアでもエンジニア以外でもポジションはこだわりません」と伝えていました。PdMになったのも、そのときの考えからブレていません。自分がバリューを発揮できるポジションを選んだ結果です。
― キャリアを順調に描いてきたと勝手に思っていたので意外でした。
福井:私はもともとプレイヤーとしてコードを書いていくつもりでした。ですが、リーダーとして働いていくうちに「メンバーのために動くのが好きだ」ということがわかりました。メンバーの背中を押してあげて、どんどん自由に働いてもらうようなイメージですね。もともと周りをサポートしていくのが向いていたんだな、という気づきがありました。
石坂:将来的なことはそれほど考えていませんが、2年ごとに「今のキャリアは合っているのか」と考えるようにはしています。その考える時期とPdMの話がちょうど同じ時期でしたね。
福井:その時々で全力でやってきたことが今につながっていると思っています。キャリアを適当に考えているわけではなく、今の自分に合っているタスクを丁寧にこなして、バリューを発揮していくことが大事なのかなって。
ー そう考えるようになったキッカケがあったのでしょうか?
福井:昔は、長期的なキャリアプランが立てられないことを悩んだ時期もありました。今のように考えれるようになったきっかけは、スティーブ・ジョブズの名言「将来をあらかじめ見据えて、点と点をつなぎあわせることなどできません。できるのは、後からつなぎ合わせることだけです」に出会ってからです。
以前の自分のようにキャリアに悩んでいるメンバーのサポートもできたらと思っています。
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Text by megaya