リクルート・GMOペパボ・noteで考える、デザインチームのあり方とは?【イベントレポート #デザインマネジメントナイト】
日々、「どうすればよりよいデザインチームをつくれるのか」「メンバーの成長をどう支援すればいいのか」と、頭を悩ませている現場のデザインマネージャーたち。
正解のない課題に向き合う中で、自分自身の成長やキャリアに悶々とすることも多いでしょう。
そんな悩めるデザインマネージャーに向けて、リクルート・GMOペパボ・noteの3社でイベント「デザインマネジメントナイト」を開催しました。
この記事では、当日のLTとセッションの様子を、一部ご紹介します。
noteでは、今後もデザイナー向けのイベントを開催予定です。ぜひお気軽にご参加ください。
イベントはまず、リクルート・GMOペパボ・noteの3社による「デザインマネジメント」をテーマにしたLTから始まりました。
LT①リクルート髙橋さん:デザインチームを進化させるデザインレビュー
賃貸や戸建て、マンション、売却などのさまざまな住宅領域で展開する『SUUMO』では、ひとつの領域が1つの会社に匹敵する規模で、領域によって事業のフェーズや開発体制も異なるといいます。
デザインマネジメントGは、そんな各領域を横断した組織です。この組織構造の中で効率的にレビューを行うため、レビューを待ってデザイナーが悩む「無駄なリードタイム」や、「心理的ハードル」をなくすための工夫をしているそう。
まず、無駄なリードタイムを短縮するために、レビューの開催は柔軟に設定。事前にSlackで相談事項を共有することで、迅速なレビューを実現しています。また、心理的ハードルを下げるために、普段から気軽に壁打ちできる空気作りをしているそうです。他の人も、好きな時に自由にラジオ感覚で参加しています。
さらに、レビュー時にはネクストアクションを明確にすることで、デザイナーの考えを整理し、前進させることを心がけているといいます。
これらの取り組みにより、レビューを通して大事にしている観点が鍛えられ、デザインを提案する際のスキルアップにつながっています。
LT②GMOペパボ山林さん:デザイナーの成長を促す目標設定
GMOペパボでは、目標設定の際に期待値をすり合わせ、メンバーそれぞれが注力すべき方向性を明確にすることを意識しているといいます。
そのために期初に行っているのが、「トップ10プランナー」という取り組み。これは、上長がメンバーに期待することと、メンバー自身が期待されていると感じていることを互いに書き出し、すり合わせるものです。
また、目標設定では、「どの手段で達成するのか(How)」ではなく、「何を達成するのか(What)」を大切にしており、AIなどのテクノロジーも取り入れながら柔軟に対応できるようにしているそう。
「メンバーとは定期的に1on1を実施し、困っていることがあれば相談に乗っています。細かく軌道修正するのではなく、メンバーが自発的にアクションできるようサポートすることを心がけているんです」と話す山林さん。
1on1では直近の取り組みや目標に対する進捗を確認し、困っていることがあれば、その都度アドバイスやフォローをしています。
さらに、1on1とは別に誰でも参加できる雑談タイムを週2回設定し、気軽に相談できる状態に。コミュニケーションを通じて、メンバーの成長を促す仕組みをつくっています。
LT③note宇野さん:デザインチームの作り方〜縦から見るか横から見るか〜
まず、デザイナー組織のタイプは大きく分けて3つある、と紹介する宇野さん。
各事業に専任のデザイナーが所属する「事業部型」は、事業に強くコミットメントできます。一方で、事業を超えたデザイナー同士の交流が減り、孤立しやすい傾向も。
また、横断型はデザイナー間のナレッジシェアがしやすく、中長期的なデザイン投資が可能です。反面、他職種との距離が遠くなりがちというデメリットもあります。
noteのデザイン組織は、2022年に宇野さんが開発組織を統括したタイミングで、横断型から事業部型に移行。デザイナーにも事業目標やKPIを設定しました。
しかし、事業KPIを追う中でnoteらしさや体験の一貫性が少しずつ薄れてきていることも感じていました。そこで2022年末の上場を機に、プロダクトデザイナーやコミュニケーションデザイナーなどを集めた横断型組織に再度移行しています。
▼noteのデザイン組織については、以下の記事でもご紹介しています。
ただし、この事例が他社でも再現性があるとは限りません。組織形態の決定には、会社の成長フェーズ、メンバーのキャリア志向、プロダクトの位置づけなど、さまざまな要因が関わってきます。
「それらが掛け合わさって、組織の形ができ、マネージャーの役割も決まる」と宇野さんは締めくくりました。
セッション:デザインマネジメントって楽しい!
続いて、3社が登壇し「デザインマネジメント」をテーマにトークセッションを開始。事前に寄せられた質問などをもとに深掘りしていきます。
ノウハウを共有するための組織・ツールの工夫
宇野さん:まず前提の説明もかねて、それぞれの会社のデザイン組織について聞いてみます。noteは先ほどのLTでもお話ししたように、横断型のデザインチームから事業部型に移行し、その後再び横断型になっています。リクルートさん、GMOペパボさんはどうですか?
髙橋さん:リクルートでは、事業部を横串で刺すような形で横断組織が機能しています。事業にコミットしながらも、横のつながりでノウハウや情報を共有することで、両方のメリットを活かせる体制になっています。
具体的には、月に1回は全デザイナーが集まるデザイン会を開催し、ナレッジを共有をしています。領域を超えて、HRや住まい、旅行などの各事業領域のデータや知見がシェアされます。パートナー企業のデザイナーも含めると、数百人規模の会になります。
山林さん:ペパボでは、事業部ごとに縦割りのチームがあり、それぞれにデザイナーが所属しています。一方で、事業部を横断するデザイン組織も存在します。
また、EC事業部内にもマーケティングチームやプロダクトチームなどさまざまなチームがありますが、各チームを横断するかたちでデザイン組織が存在しています。それぞれのチームに所属するデザイナーが独自の判断で仕事を進めていると、全体としての体験が分断されてしまう恐れがあるからです。
宇野さん:そうすると、会社全体の横断組織は、全体を底上げするようなものに注力しているのでしょうか。
山林さん:そうです。横断組織には、UIデザインやWebデザインなど、各分野のスペシャリストが多く所属しています。たとえば「UIデザインを大きく変えよう」となった際に、全事業部にシニアデザイナーがいるわけではないので、レビュアーとして入って事業部を支援したりしています。
その際に、ある事業部が抱えている課題を他の事業部でも見かけたことがあれば、うまく連携したり一緒にやろうと声をかけたりしています。事業部の方々も、横断組織と一緒に仕事をする機会が多いですね。
髙橋さん:リクルートも、事業部の中だけで見た時にはナレッジがなくても、リクルート全体で見るとデザインシステムやユーザビリティテストのプロフェッショナルがいます。
そのプロフェッショナルのナレッジを「デザインデータベース」というかたちで一箇所に集め、リクルート全体で常にアクセスできる状態にしています。みんながゼロから学ぶのではなく、一段上がった状態から取り組めるような仕組みです。
宇野さん:なるほど、すごいですね。大きい会社だとナレッジ共有が課題になりやすいですが、それを超える仕組み作りをされているわけですね。
デザインマネージャーはワクワクする仕事
宇野さん:デザインマネジメントの話でよく話題になるのが、「マネージャー自身も手を動かすべき?」「マネージャーとしての成長はどう考えるのか?」といったテーマですよね。
髙橋さん:私がマネージャーになったのが2023年1月なので、まだ2年目です。元々デザインリードのような立ち位置で、デザインチームを率いるリーダーでした。そこからマネージャーになったときは、リーダーとマネージャーの違いが理解できなくて、メンバーと対話しながら、何とか日々を過ごしていました。
2024年はマネジメントに真正面から向き合おうと思って、マネジメントを一つのスキルだと捉え、意識的にスキルアップのために学習をしてきました。
書籍を読んで体系的に学んだり。マネジメントのやり方が上手いなと思う人にひとり一人に声をかけに行って、その方がやっている具体の取り組みから自分に置き換えて何ができるのかということを学んだり。この2軸でマネジメントのスキルアップをしてきました。
宇野さん:実際それに取り組まれてきた感想としてはどうなんでしょう。楽しいなと思うのか、結構つらいなとか。
髙橋さん:新しい学びがまだまだあるなって感じて、すごくわくわくしました。マネージャーはリーダーの延長だと捉えていたときには見えなかったことが、書籍や他のマネージャーひとり一人の頭の中にあって。
マネージャーのことを勘違いしていた。もっとできること、メンバーに対して組織に対してプロジェクトに対して、私が動けることってあるんだなと思いました。
髙橋さん:マネージャーとして一段成長したら、その次はそのマネージャーをマネジメントする人たちの視座を学ぶ。そうやってどんどん視座を高めていくっていうのを、引き続きトライしていきたいなと思っています。
誰かと話すことが一番の学びになる
山林さん:私は2021年の末ぐらいからデザインリードとして、デザイン組織のマネジメントやピープルマネジメント、経営メンバーとのデザインに関する協議などをやっています。その前にサブマネージャーとしてビジネス領域のマネジメントもしていたので、マネジメントに対する苦手意識はあまりありませんでした。
自分の成長という点では、デザインリードになった当初は全社のデザイン方針を決めるCDOがいて、そのCDOがロールモデルでした。CDOのデザインレビューや視点をできるだけ吸収しようと、わからないことは質問しながら学んでいました。
CDOが退職してからは、悩むこともありました。そんなときにはマネジメント歴の長い人に相談したり、他の組織のデザインマネージャーがどうしているのかを知るためにイベントに参加してお話を聞いたりしながら、日々勉強させてもらっています。私の中では人と話すのが一番自分の成長につながりやすいと感じています。
「CDO」は偉大なるデザイナーになるための通過点
宇野さん:僕の名刺にはCDOと言う肩書きと並列で、「デザイナー」って書いてあるんです。僕はデザインが好きでデザイナーになって、今もデザインが好きだからデザイナーをやっています。なので今43歳なんですけど、60歳のときにはもうただのデザイナーに戻って仕事をしようって決めています。僕の中では実はCDOは、偉大なるデザイナーになるための通過点です。
「手を動かすべきかどうか」はわからないけれど、僕は今も日常的にデザインをしてます。Figmaの新機能が出るたびに、朝起きたら真っ先に全部触って、「これ最高じゃん」みたいなことを社内のSlackでつぶやくことも。
髙橋さん:成長のために取り組んでいらっしゃるというよりかは、もうそれが好きでやりたいからやってるってことですよね。
宇野さん:そうですね。僕、noteの事業におけるデザインでは、社内の誰にも負けない自信があるんです。
それは経営に関わっていて、このプロダクトがどうあるべき、というのを僕が必死に考えているからできるチート技なんですけど、せっかくマネジメントをするならそれぐらいの特権が欲しいじゃないですか。
髙橋さん:マネージャーになると、マネジメントもやりながら、デザイナーとしても一番先頭を突っ走るっていう難しさっていうのがあって、けっこう葛藤した時期があったんです。
でも、いろんなトッププレーヤーの方にお話を聞いている中で、マネージャーは一番面白いと思える打席を自ら用意できるんだって気づきました。リーダーやマネージャーは、抽象度が高くて、まだ決まってないところを面白いと捉えられる人が多いと思います。そこを自分で打席にしていくことによって、プレイヤーとしても高められるし、マネジメントとしても役割を果たせるんじゃないでしょうか。
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デザインマネジメントやデザイン組織に求められることは、企業規模や業界、事業のフェーズなどによってもさまざまで、絶対的な正解はありません。
ですが、マネージャー自身がいきいきと楽しみながら働けること。そんな一見あたり前にも思えることが、実はとても大切なのかもしれないと感じられるイベントでした。
今回登壇したリクルート、GMOペパボ、そしてnoteでは、それぞれのデザインの取り組みをnoteでも発信しています。ぜひ、こちらもあわせてご覧ください。