偏愛と信念でnoteを広める。カテゴリーディレクターたちの素顔
スポーツ、ゲーム、教育、音楽、マンガ・アニメ、アートなどなど、noteにはさまざまなカテゴリがあります。そのなかの一部カテゴリに専門特化し、関連するクリエイターと向き合い活性化していくポジション。それが、2020年に新設されたばかりのカテゴリーディレクターという職種です。
今回の #noteのみんな では、カテゴリーディレクターとして、note、そして各業界の活性化を推進する中野さん、須山さん、藤里さんにインタビュー。仕事の定義が固まっていないし、社内に同じ分野について相談できるひともいない。もちろん会社の外に目を向けても、同じ仕事をしているひとはいない。そんな環境を切り開いてきました。
では、どういう人材であれば、noteのカテゴリーディレクターとして活躍できる可能性があるのでしょうか。信念を持ってそれぞれのカテゴリに向き合う3名の言葉からは、好きなものを仕事にすることへの喜び、そして誇りが感じられました。
ひと言では語れない「カテゴリーディレクター」という存在
ーまず、カテゴリーディレクターの仕事を教えてください。
中野さん:わたしは公共・教育のカテゴリを担当しています。自治体や学校、美術館や博物館、図書館といった文化施設が、当たり前のようにnoteを活用している状態をつくること。noteそのものが街のような、みんなが当たり前にいる空間を目指しているので、当然そういった施設もあるべきと考えています。
中野麻衣子(なかの・まいこ)
立教大学卒業後、ベネッセコーポレーションで進研ゼミ小学講座の企画・教材編集に10年間携わる。東洋経済新報社を経て、2020年1月にnote入社。自治体や学校、文化施設に向けたnote proの無償提供やN高とのコラボレーションなど、公共・教育分野でさまざまな取り組みを実施している。
現在、主に取り組んでいるのは、note proという法人向けサービスを学校や自治体、文化施設に無償で提供し、個別にサポートしていくこと。2020年9月時点で25の団体がnote proを導入してくれていますが、ご相談はその倍以上いただいていますね。
須山さん:ぼくが担当しているのは、ゲームのカテゴリです。2020年6月に入社したばかりなので、まずはゲーム業界において、どのようにnoteが認知されているのかをリサーチすることからはじめました。現在は、ゲーム/アプリ開発ツール「Unity」とのコラボイベントやnoteでのお題を企画したり、eスポーツチームにnote proを活用してもらったり、他社とのコラボ企画を立案したりしています。
現在注力しているのは、noteにおいてゲームの「カテゴリメディア」をつくっていくこと。たとえば、ゲーム会社とコラボしてタイトルごとに記事をまとめた公式マガジンをつくって、クリエイターも気軽に記事を追加できるようにしていきたい。ゲーム好きなクリエイターが楽しみながらメディアの運営に参加できるような仕組みをつくれるように、開発へのフィードバックもしまくっています。
藤里さん:ぼくは、スポーツのカテゴリの担当です。ミッションは、アスリートやチーム、スポーツ関係の企業に「noteでスポーツに関する発信をしてもいいんだ」という認識を定着させること。そのために、毎月1回は有名アスリートやクラブチームをお呼びしてイベントを開催しています。その甲斐あって、最近ではイベントをやりたくてnoteを始めてくれたところもありました。現在は、さまざまなスポーツの15チームくらいを巻き込んだ企画が進行中。いろいろな切り口で、スポーツのカテゴリを盛り上げていきたいと思っています。
ーひと口に「カテゴリーディレクター」といっても、やっていることもゴール設定もバラバラなんですね。
中野さん:そうですね。各自が担当する業界の状況、業界におけるnoteの見られ方や期待に応じて、代表の加藤さんに相談しながらゴール設定をしています。決めたゴールは状況によって柔軟に変えることもありますね。
藤里さん:基本的にはみんな個人プレイです。カテゴリーディレクターの場合は、そのカテゴリに詳しいひとが社内にいないから、入社してすぐに「おひとりでどうぞ」という扱いを受けることが多いですね(笑)。当然、担当分野に関する知識は、誰よりもなければいけない。
ただ、相談に乗ってくれるひとがいないわけではありません。加藤さんやCXOの深津さんにも気軽にSlackで相談できるし、「その質問だったらこのひとに聞いたほうがいいよ」と教えてもらうこともある。だから「孤独」というわけではありません。
須山さん:質問や相談することに関して、ぼく自身はまったく躊躇がないですね。加藤さんにも「これ、やっていいっすか?」と三行ぐらいでDMを送って、どんどん承認を取っています。
正解がないからこそ、すばやく試せる環境はありがたい
ー社内に協力体制があるとはいえ、まだまだ職種としての定義が曖昧で、みなさん自身が確立しようとしている段階という印象を受けます。それにも関わらず、なぜカテゴリーディレクターを志望したんですか?
藤里さん:ぼくの場合は、noteというサービスに惹かれたからです。もともとスポーツ全般が好きだったので、業界全体を盛り上げられることをやりたかった。
藤里純(ふじさと・じゅん)
慶應義塾大学卒業後、株式会社インターナショナルスポーツマーケティングでゴルフメディアの担当に。ライティングやマーケティング、企画営業などwebメディア全般に関わる。その後、eスポーツイベント会社を経て、2020年1月にnote入社。スポーツ×メディアプラットフォームの力でスポーツの価値の最大化を目指している。
目をつけたのが、元メジャーリーガーのデレク・ジーターが立ち上げた、アスリートが引退の真実や幼少期の経験などを自分の言葉で伝える「プレイヤーズ・トリビューン」というデジタルメディアです。ぼくは前々職で“「プレイヤーズ・トリビューン」の日本版”的なメディアをやるべく各所にかけあったのですが、結局叶わなくて。
でも、noteは自分語りに向いているサービスだから、たとえばプロ野球のドラフト会議前に、選手が親への想いを綴った手紙などを載せるとすごくマッチするはず。さらにアスリートがよく感じている「メディアは発言が切り取られる」という不満も解消できます。スポーツ関係の企業への入社も検討したけど、どれかひとつの競技に限定されるのは物足りなくて。業界全体に貢献するために選んだのが、noteでした。
須山さん:ぼくは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」というnoteのミッションに惹かれました。特に心を動かされたのは、後半の“続けられるようにする”です。
というのも、ぼくはもともとダーツのプロだったのですが、ダーツ一本で生活していくことはすごく難しかった。同じようにゲーマーのなかにもゲーム一本で生活できていないひとはいます。ゲーマーがゲーマーを“続けられる環境”をつくるために広くアプローチしていくことは、個人のミッションとして捉えていて。noteであれば個人ミッションも実現できると考え、エントリーしました。
中野さん:わたしも、最初はnoteのミッションに興味を抱きました。いろいろ調べているうちに、わたしがたいせつにしている「自分の好きなことを自分の言葉で語れるように」という教育観がマッチしていると感じて。noteで教育に携わりたいと思い、応募しました。
ー入社後はどうですか? 不安はありませんか?
中野さん:不安も何も、正直なところカテゴリーディレクターという仕事のイメージがなかったので、ギャップを感じることはありませんでしたね(笑)。
須山奏(すやま・そう)
慶應義塾大学卒業後、プロのダーツプレイヤー、起業、医療系スタートアップなどを経て、2020年6月にnote入社。大のゲーマーで、ここ数年はスプラトゥーンで「ドラフト杯」を運営している。趣味アカウントのフォロワーは2.4万人。
須山さん:ぼくの場合は、過去に起業も経験していたし、前職もベンチャーだったので、ゼロイチの環境にはまったく抵抗がありませんでした。というか、不安を感じるようなひとは向いてないと思いますね(笑)。
藤里さん:手厳しいですね……(苦笑)。ま、ぼくも不安はありませんでしたね。まずは何をやるべきなのかを見つけようと入社から1ヶ月の間にいろんなアスリートに会うことから始めました。話を聞いているうちに方向性が見えてきて、それを加藤さんや上司の坂本さんに提案したらあっさりOKをいただきました。
ー逆に、noteのいいところはどんなところだと思いますか?
藤里さん:自由にやらせてくれるし、否定的なことをまったく言われないのはありがたいですね。ぼくらのミッションは、担当しているカテゴリをとにかく発展させること。もちろん、失敗することも多々あるわけです。
でも、みんな「次がんばればいいでしょ」「次に取り返そう」と背中を押してくれる。気軽にチャレンジし続けられる雰囲気があります。
須山さん:そう。失敗しても怒られないのがいいですよ。そして、結果を出せば、全社員が集まる全体会議でも名指しで褒めてくれる。バリューに掲げている「すばやく試そう / Try First」がちゃんと定着していることを感じます。
中野さん:わたしはベンチャーで働くのが初めてだったのでイメージできていなかったのですが、スピード感はあります。教育機関へのnote pro無償提供も当初は3ヶ月後くらいのスタートをイメージして提案していたのですが、いざ承認されたら各所に話をして、1週間で仕組みを整えてプレスリリースを出しました。
正直、最初はnote proの無償提供には後ろめたさもあったんです。収益を上げようとしていないことになってしまうのではないかと。でも、今後のnoteの存在意義を考えたら、教育機関への無償提供には意味がある。だから、加藤さんも目先の利益ではなく、先々を見据えた意思決定をしてくれたのだと思います。良心に背くことなく働けている感覚はありますね。
孤独かもしれない。でも、ひとりじゃない
ーカテゴリーディレクターという仕事のゴールはどこなんでしょうか?
中野さん:noteがインフラになるために貢献していくことですね、教育機関や自治体、文化施設に「ウェブサイトをつくるならnoteで」という考えが定着していくことが一つのゴールだと思います。担当者の方は興味があっても、上長が知らなくて決裁が通らないこともあるので、まだまだ課題は山積みですが。
もう少し短いスパンで考えると、noteでの発信やメッセージの言語化についてサポートしていきたいですね。先日N高でnoteの使い方を講演したときに生徒のみなさんが喜んで、創作へのモチベーションを上げてくれたのがすごく嬉しくて。今後「学校や自治体のnoteがおもしろい!」と言われるようにしていきたいと思います。
藤里さん:ぼくの場合は、あらゆるスポーツの情報がnoteから発信されるようになることです。他のブログサービスを継続して使うこともおすすめしていますが、たとえば試合前の意気込みや振り返りなど真剣な想いはnoteに綴ってほしいと思っています。そして、noteに誰かが書いたことをソースに、ほかの誰かがnoteに書いて……という循環を生むことが理想ですね。
いまってバラバラに発信しているからこそ取得できていない情報がたくさんあります。一般の方が、すごくいい試合のレビューを書いても、個人ブログゆえにまったく広まらない。それって、すごくもったいないですよね。アスリート、チーム、メディア、そしてファンと、スポーツ業界全体がnoteを活用することで活性化していきたいと思います。
須山さん:ぼくも藤里さんと似ているかもしれません。noteを活用することで、クリエイター、ゲームメーカー、ディベロッパー、そしてゲーマーがゲームを続けていけるようになったらゴールだと思います。そのためにぼくが考えているのは、メディアの立ち上げなんです。
現在は、ショッピングのカテゴリがメディアとして機能しているのですが、同じようにゲーム愛に溢れた記事がたくさん載っているメディアをつくっていきたいと思います。
noteのショッピングカテゴリ
ー最後にnoteのカテゴリーディレクターとして活躍できるひとの条件を教えてください。
須山さん:まずは、前提としてゼロイチに抵抗がないこと。サービスの成長に組織が追いついていない段階なので、マニュアルもなければ、情報も分散しているので。
そして、カテゴリへの愛情も必要でしょうね。かといって、偏執的にならないことも大事。ゲームも「RPGだけ」といった特定の領域にフォーカスできるわけではないので、カテゴリ全体への愛情と知識が求められると思います。
中野さん:視野の広さは大切ですね。コンテンツの細部にこだわることもすごく大事ですが、事業としての進め方を考えることも必要。「これを伝えたい!」と思ったときに、そのまま発信するのではなく、俯瞰して伝え方を構築できるひとのほうが向いていると思います。
藤里さん:「好きなものを翻訳して伝える力」と言い換えられるかもしれません。単に好きなものだけを追求していても、周囲の協力は得られない。ちゃんと翻訳して理解できる言葉で発信することで、初めて周囲は興味を持てるようになると思います。孤独な要素はある仕事ですが、独りよがりにならずにまわりを巻き込んでいくことが重要ですね。
ー「業界を盛り上げたい」と思って起業しても、気軽に相談できるパートナーがいないと失速してしまうかもしれない。でも、noteなら周囲の協力を仰ぐことで着実に成果につなげていける。noteという環境をいい意味で利用できるような方に向いているような気がしました。ありがとうございました!
▼noteを一緒に作りませんか?
Text and Photo by 田中嘉人