ブランドがnoteをもっと活用したら、世の中はもっと楽しくなる
「企業がブランディングしていくうえで、noteはこれまでにない手法を取れるプラットフォームだと思います」。そう語るのは、noteでブランドのコミュニケーション支援や法人向けの事業開発を手がける京樂里奈さん。
京樂さんは、もともと三越伊勢丹研究所でマーケティングやトレンド分析を経験し、その後ブランディングエージェンシーのSIMONE(シモーネ)へ。SIMONEではさまざまなブランドのブランド戦略やコミュニケーション設計を手がけ、取締役まで務めました。
まさにブランディングにおけるプロフェッショナルである京樂さん。では、なぜ彼女は新たな活躍のステージにnoteを選んだのでしょうか。そして、冒頭で述べた「ブランディングにおいてnoteがこれまでにない手法をとれるプラットフォーム」という言葉の真意とはーー。
シンクタンク、ブランドエージェンシーで磨かれたブランドへのまなざし
京樂里奈(きょうらく・りな)/ブランドストラテジー領域ディレクター
三越伊勢丹研究所にてマーケティングコーディネーターとしてトレンド分析やデジタル領域の事業企画に従事。その後、ブランディングエージェンシーSIMONE INC.にてプランニングディレクターとしてブランド戦略や事業開発のコンサルティング、キャンペーンの企画等を手がける。2020年9月にnoteへ入社。ブランドがnoteを活用するためのメディア事業の開発やアライアンスを担当。
ー本題に入る前に、京樂さんの経歴について詳しく教えてください。
小売業でのマーケティングやデジタル事業の開発と、ブランドエージェンシーでの経験を通して、さまざまな角度から、ブランドと人との関係性を模索してきました。
20代を過ごした三越伊勢丹研究所では、国内外のライフスタイルトレンドや消費者の生活様式などの調査・分析を踏まえて、さまざまなブランドの顧客への「届け方」を研究・支援。本社に移籍した後は、さまざまなスタートアップや外部のエージェンシーと協業しながら、新しいメディアやECなど新規事業の企画開発にも携わりました。
ーブランドの支援と、ブランドを生み出す過程と双方を経験されてきたんですね。
はい。そのなかで、事業会社自身のブランド戦略やデジタル戦略に一貫性を持ち、社内のコンセンサスをとることの重要性を実感していました。一貫性に課題があることで、施策の点が線になっていかない歯痒さを感じていたのです。「一時的に認知を上げたり、点の施策をうつのではなく、本質的なブランドの戦略からアウトプットまで一気通貫で関わっていく必要がある」という気持ちが芽生えていきました。
そして、「自分が事業会社側でやってほしいと思っていたサービスが提供できるかも」と感じて、ブランドエージェンシーのSIMONEへ2015年に転職をしました。
noteなら、中長期的に消費者とつながっていける
ーSIMONEではどういった業務を担当されていたのですか?
新しいブランドを作ったり、リブランディングをする際の、中長期的なブランド戦略からコミュニケーション設計までのすべてです。
SIMONE自体がデザインや制作力に強みを持っていたこともあり、ブランド戦略をウェブサイトや記事コンテンツ、ECサイト、アプリ、動画、スチールなど、さまざまな顧客のタッチポイントで表現するクリエイティブのお手伝いもしていました。
ー戦略立案からクリエイティブの作成までで、意識されていたことはありますか?
そのブランドが持つ機能的価値だけでなく、情緒的価値を伝えることです。特に、近年はブランドの起源や創業者の思い、存在意義などの情緒的価値が購入の意思決定におよぼす影響は強くなっています。
この価値がブランドを受け取る顧客の生活や人生にとってどんな意義があるのか、インサイトを探ったうえで、くっきりとわかるクリエイティブをつくり、ブランド自身の一人称で社会や顧客に語りかけて届ける。これをやり続けることで、ブランドへの理解や共感が、生まれていきます。
ー正直なところ、やりたいことをやれていたような印象を受けます。なぜnoteに?
確かに前職の仕事はすごくやり甲斐がありました。取締役という責任あるポジションをまかせていただいた経験は、人生の大きな財産です。
背景の一つは、さまざまなブランドのコミュニケーションを設計しているうちに既存の「届け方」はすごく限定的でかつ制約が多いと気づいたことです。これは前職にかぎらず、現在のデジタルマーケティングにおける顧客のタッチポイントの第一線が、基本的にSNSなどのデジタル広告であることに起因します。たとえば、どんなに魅力的なコンテンツをつくったとしても、見てもらうためにはSNS広告に載せることになります。
そんなときにnoteと出会い、驚きました。信じられないくらいの長い文章でもたくさんのひとが読んでいる場所でした。そして、著名な人もそうでない人も、noteのクリエイターは自分の言葉で発信して、共感する人とつながっていく。広告のパフォーマンスを追っていた、マーケティングやコンテンツ制作サイドの人たちからすると、noteではあり得ないエクスペリエンスが起きているわけです。このエクスペリエンスが、ブランド起点でももっと起こったらいいのに、と強く感じました。
二つめは、自分自身がもう一度、事業サイドで自社の事業開発に関わりたい気持ちが強くなってきたことです。これまでコンテンツをたくさんつくり、ブランドの根幹に関わる提案もしてきました。でも、「届け方」の部分に関わることはできませんでした。主要なSNSと違ってnoteは国産のサービスなので、プラットフォーム上でのコンテンツの届け方の設計にも関わっていける可能性があります。
noteでは個人のクリエイターを中心に、発信を通じて仲間を見つけたり、その方が本当にやりたかったことを実現できたりと、さまざまな嬉しい体験をよくお聞きしています。このメリットを、ブランドの方にも実感していただけるような体制を作りたいと思い、入社しました。
noteで、世の中はもっと楽しくなる
ーnoteでは、どういった業務を担当されているのでしょうか?
ブランドがnoteを活用する上で必要なあらゆるメニューを開発することです。
すでにあるところでいうと、コンテストメニュー。noteでは、法人やブランドの協賛でコンテスト形式で作品を募集。審査員の方に評価を依頼して、優秀作品を選出する催しを頻繁に開いています。企業やブランドが届けたいメッセージをクリエイターが投稿しやすいように、みんなが考えるきっかけとなるハッシュタグに編集しています。
コンテストは、クリエイターの活躍の場であると同時に、企業と顧客にとっては新しいコミュニケーションでもあります。コンテストに応募された作品はクリエイターが自身のフィルターを通してブランドを語った創作物。その作品を通じて、読者はそのテーマについて考えるきっかけが生まれ、ときに共感を呼びます。まさにnoteならではの「届け方」といえるかもしれません。
さらに、コンテストへの投稿を分析すると世の中のインサイトを探ることができます。企業、ブランドサイドからすると進みたい方向性に対するインサイトやペインを探れるチャンスになればという視点もあり、投稿内容の分析を、レポーティングにつなげていくことも強化しています。
2021年1月、noteのお題に集まった投稿を分析したレポートをはじめて発表した。
ーこれまでの課題意識が、いまの仕事につながっているんですね。今後やりたいことについても教えてください。
まだまだ第一歩を踏み出したところで、やりたいことは山積みです。直近は、コンテストメニューにいくつかのバリエーションを検討しています。また、企業みずからの「つくる」をサポートするような、コンテンツの戦略や編集に関わるメニューも強化していくべきだと考えています。そのために、さまざまな企業と手を取り合って新しいメニュー開発を進めています。
「自分らしく語る」は、頭では理解していても、実際にやってみると難しいもの。これはブランドにとっても難しい課題です。当社は代表の加藤さんが元編集者ということもあり、noteにはクリエイターが書きたくなるテーマを提示する「お題」があったり、創作に集中するための真っ白なエディタ画面があったり、編集視点のいろいろな機能が実装されています。今後は、ブランドが「自分らしく語る」ことのできるサポート機能を用意していきたいですね。
noteのミッションである「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」の「だれもが」は個人のクリエイターだけではなく、あらゆるブランドも対象としています。noteのタグラインである「つくる、つながる、届ける。」のすべてを支援していきたいと思います。
ー難易度が高い業務という印象を受けるのですが……。
エージェンシーやコンサルティング、メディアビジネス、または事業サイドのマーケティングやブランドマネージャーなど、さまざまな業種の方に、活躍いただける可能性のある業務であることは間違いないと思います。ブランドマーケティングやメディアビジネスについて、何か課題に感じたことがある人なら、その課題をソリューションに変えるチャンスがきっとあります。
ーそれほどまでにブランドの成長に尽力できるのはなぜなんですか?
ブランドそのものというより、ブランドと呼ばれる力を持ったコミュニティが、人の心や世の中を動かしていくことが好きなんです。いまわたしたちが手に触れるあらゆるものは、すべて何らかのブランドのクリエイティブの結晶です。手に触れられないインフラなども近頃はブランドとして選択される対象になっています。身の回りのものを「自分のお気に入り」と思えたり、信じられるものや共感できるものを選択することは、今、たくさんの人にとって大事なことになっていると感じます。
みなさん一人ひとりが「ここが好き」「つくり手に共感した」と自分の言葉でだれかに伝えたくなるくらい、いろいろなブランドがきちんとメッセージを届けられるようになると嬉しいです。ブランドと人との関係を後押しするところにnoteは貢献したい。まずは、コンテンツづくりや届け方をサポートしていきたいと思います。
ーコンテストひとつを見ても、既存のブランドコミュニケーションとは一線を画す新しい方法ですよね。「noteを活用して、新しいコミュニケーションをつくっていきたい」と考える方には、ぜひチャレンジしていただきたいですね。今日はありがとうございました!
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Text and Photo by 田中嘉人