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noteらしさを訴求したい。「noteの街」イラスト制作の裏側

これまでのnoteの歴史のなかでも何度も語られてきたのが「noteは創作の街をめざす」というメッセージ。サービス開始から7周年を迎え、直近の1年間では会員数も投稿される記事数も倍増(2021年3月時点の前年同月比)するまでに成長を遂げるなかでの、柱となるものでした。

そのメッセージをより具体的にイメージするものとして、note7周年の日に、ある一枚のイラストがリリースされました。

街のイラスト

※note7周年のタイミングで公開された「noteの街」を表現するイラスト

アップデートされた街のイラスト

※その後、さらなるアップデートが行われて色味が調整されている

なぜこのタイミングでイラストをリリースしたのか。どういう想いを込めて描かれた一枚なのか。2ヶ月にわたって描きあげたイラストレーターのキムさん、街のイメージを伝えたCEOの加藤さん、デザインチームリーダーの川井田さんにイラスト制作の裏側を聞いてみました。

“理論”ではなく“感覚”に訴えかけるために

ー改めて、なぜこのタイミングでイラストを制作することになったのかを教えてください。

加藤さん:ぼくらはずっと「noteは街みたいなもの」だと考えてきました。ただ、受け手によって「街」と聞いてイメージするものにバラつきがあるように感じたんです。

じつは、ぼく自身が「街」といっているときのイメージのもとになっているのは、アメリカのニューヨークなんです。多様なひとがたくさんいて、大きな公園のまわりに美術館、博物館、大学などがあって、住宅地もあり、そして、歓楽街、アーティストが集う場所、若者が集う場所、中華街、ビジネス街がある。それぞれが好きなことをして、出会いもあって、チャンスもある。そんな場所だから、さらにたくさんの人があつまる。

noteも、そういう多様性があって、それぞれが独立もしていて、それでいて出会いとチャンスがある、そんな場所にしたいなと思っています。そして、noteはインターネットだから、スペースの制限もない。だから、理想の街がつくれるなと。

ただ、こういうイメージは、みんなで共有するのが意外とむずかしくて。というのは、それぞれが自分が生まれた街や暮らしている街のイメージを持っているから、たんに「街」と言うとそっちをイメージしますよね。また、行ったことがない場所はイメージしづらいものです。

映画監督の宮崎駿さんは、作品をつくるときに一枚の絵を書いて、スタッフに見せるところからはじめるそうです。「イメージボード」というのですが、その絵を見て、これからつくる世界をみんながイメージして、目指す世界の認識がそろったところで、制作がはじまるわけです。

今回やっていることはそれに近いですね。「noteがめざす街はこういうところなんだ」ということをまずは社内に伝えて、次にそのまわりのみなさんに伝えるために、このイラストをつくることにしました。

ーどういう経緯で人選されたのでしょうか?

川井田さん:もともと、noteの世界観を表現する画風を確立するためにイラストレーターを募集しました。そこで入社したのが、キムさんです。最初はメールやポップアップのイラストなどをいろいろな角度から描くことで、画風を探ってもらいました。

そのときの仕上がりがすごくイイ感じで。その後にはじまった街のイラスト制作も、そのままお願いすることになりました。

多様性は表現したい。でも雑多にはしたくない

ーまずは何から手をつけたのでしょう?

キムさんの画像

金兌妍(キム テヨン)
日本の美大を卒業後、Web制作会社へ入社。Webデザイナー兼イラストレーターとしてWebから広告イラスト、モーショングラフィックス制作など幅広い経験を積む。2020年8月よりnoteにイラストレーター として入社。現在は主にnoteの世界観を表現するためのイラスト制作やイラストシステム開発を担当。https://note.com/taeyeonkim

キムさん:最初は徹底したヒアリングですね。加藤さんだけではなく、事業開発、PRのメンバーの“「noteは街」を社外のひとに説明してもうまく伝えられなかった経験”のあるひとたちから「こういう要素を入れてほしい」という話を聞きました。

加藤さん:かなりたくさんラフをつくってくれましたよね。頼んだぼくが言うのもおかしいかもしれないけれど、相当大変だったと思います。

たんに「街のイラストを描いてください」という依頼ではなく、「“noteは街”というメッセージをわかりやすく伝えるための方法をイラストレーターとして考えてください」という依頼だったので。ぼくらのなかにも正解はありませんでした。

キムさん:もちろんすごく大変でした(笑)。でも、すごく楽しかったです。最初の段階から自分がアイデアを出してイラストを描いていく経験なんて初めてだったので。

ー不安はありませんでしたか?

キムさん:プレッシャーというより、難しそうだと思いました。加藤さんから要望としてあったのは「楽しい街のイメージを伝えること」「多様性を表すこと」「『だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。』というミッションを表現するために、個人も企業も混ざりあった様子を描くこと」の3つでした。これらの条件を踏まえて、一枚のイラストにまとめる必要があったので。

川井田さんの画像

川井田好應(カワイダ ヨシタカ)
レコード会社や広告代理店でのデザイナー経験を経て、フリーランスデザイナーとしてベルリンを拠点に活動。ベルリンではプログラマーの弟と複数のコワーキングスペースを利用し、多数のハッカソンに参加する中で、スタートアップの世界やUI/UXデザインへの強い興味を持つ。その後再び東京に戻り、クリエイティブエージェンシーでのデザイナー経験を経て、2018年11月にnoteに入社。デザインチームのマネジメントをしながら、グラフィックデザイナーの経験も生かして様々なカイゼンを実行している。https://kawaidayoshitaka.com/

川井田さん:世界各国のクリエイター、そしてさまざまな施設も描いて、多様性を演出する方向性になったところまでは良かったのですが。

たとえば、ひとのにぎわいを表現しようとすると建物が小さくなってしまったり、逆に建物を大きくしようとするとひとの営みが見えづらくなってしまったり……本当に何度も試行錯誤しましたね。複数の課題を同時に解決することの難しさを身をもって実感しました。

街の全体を見せながら、いとなみや賑わいを見せるために

ーどのようにバランスをとっていったのでしょう?

キムさん:細かくいろいろな要素は盛り込みつつ、細かくしすぎるとイラストしてのおもしろみがなくなってしまうので、メリハリのつけかたには苦労しましたね。個人的に左下に書き加えた「白いカモメ」がいい味を出してくれたように思います。

街のうえを飛ぶカモメのイラスト

加藤さん:あのカモメ、すごく良かったですよ。街全体に遠近感を出すために手前に何か大きく描きたくなるのですが、モチーフが「人間」だと多様性が損なわれてしまうところだったので。どのタイミングで思いついたアイデアだったんですか?

キムさん:締め切り前日の20時ぐらいです(笑)。本当にギリギリでした。

川井田さん:空が少し寂しかったので、パラグライダーなども検討したのですが、やはり生き物である鳥のほうがイラストに温かみが出るような気がしたので。

談笑するキムさんと加藤さんの画像

ーそういえば、配色も7周年で発表されたものから、かなり変わったんですね。

キムさん:街全体やクリエイターの多様性を表しつつ、これからの創作へのモチベーションにつながるような、元気で楽しいカラーリングに変更しました。はじめに皆さんへお見せしたものはnoteのシグネチャーカラーに合わせてトーンを統一していたんです。ただ、もともと伝えたいメッセージである「多様性」「賑やかさ」を表現することにフォーカスして再検討しました。

ー他に工夫したところとしてはどのあたりでしょうか?

川井田さん:普通にイラストを見ているだけではわからないと思いますが、じつは「横展開を前提」にしています。たとえば、ほかのデザイナーがこのイラストをベースに服や帽子、建物を変えたり、オフィスの部分だけを拡大したりして、利用することもできる。

別のデザイナーやイラストレーターとも共同作業しやすいデータのつくり方をしてくれています。

加藤さん:だから、今後キムさん以外のひとが入社しても描きやすいと思います。「noteのイラストの画風」をつくってくれただけではなく、ブランディングのベースをつくってくれた点で、キムさんの功績は大きいですね。

“noteらしさ”を強固にするための足がかりに

note7周年の事業発表会の画像

note7周年の事業発表会では、街のイラストをバックに今後の展望が語られた

ー今後、このイラストにはどういったことを期待しますか?

川井田さん:イラストはあくまでもイラストなんですよね。“noteらしさ”とは、ぼくら一人ひとりの振る舞いでつくられます。

たとえば、法人向けにセールス担当が説明するときと、個人のクリエイター向けにディレクターが説明するときは同じ態度であるべきです。社内外限らず、一人ひとりの振る舞いに一貫性がでることで、“noteらしさ”はより強固になっていく。

今回のイラストによって、街の具体的なイメージはできたので、今後はひたすら日常のコミュニケーションにも使っていくことがたいせつだと思っています。

加藤さん:こういう意見が出るだけでも、イラストを描いた価値がありますよね。今後新しい施策を提案する際に「この“街”には似合わない」「この“街”で、こんなことが起きるといいな」という判断ができるようになる。一見社外向けのような印象を抱くイラストですが、じつは社内向けでもあるわけです。

ーありがとうございます。最後にキムさんはこの仕事を通じて、変化はありましたか?

キムさん:たくさんありました。これまでは、言われたとおりのビジュアルをつくる仕事が多かったのですが、noteへ入社して自分で考える力を鍛えられたし、ものづくりの本質に触れられたような気がします。

加藤さん:noteはいままで社会になかったサービスをつくっていこうとしています。だれも正解を持っていないし、前例がないような仕事ばかりです。そんなときは、キムさんのように才能がある方にコンセプトだけを伝えて動いてもらったほうがいいものができる可能性が高いと思います。これは、キムさんに限らずあらゆる職種に共通しています。だから、これからも前例がなくとも自らゴールをたぐり寄せるスタンスで、新しい仕事にチャレンジしてもらいたいですね。

ー改めて、noteは経営陣だけではなく、メンバー一人ひとりがブランディングの担い手だということがよくわかりました。このイラストをテーマに、さらにお互いのコミュニケーションが活発になっていくのではないでしょうか。今日はありがとうございました!


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Text and Photo by 田中嘉人





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