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Unityとnoteが語る、創作におけるコミュニティの役割

あたらしい日常がはじまるなかで、映画やマンガ、小説に心を助けられたひとも多いのではないでしょうか。また、自分自身でも日記やエッセイを書きはじめてみたり、じっくり料理をつくってみたりと、創作にチャレンジするひとも増えているように思います。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」というミッションを掲げるnoteも、創作のインフラとしての重要な役割を実感しています。

noteと同じように、クリエイターの創作活動をサポートしているのが、ゲーム/アプリ開発用ソフトウェア「Unity」。2020年3月から、Unityはnoteでの情報発信をスタートし、8月12日、両社は継続的なコラボレーションを行なっていくことを発表しました。

Unityのコミュニティエバンジェリスト・田村幸一さんと小林信行さんは、noteにクリエイティブなコミュニティをつくりたいと語ります。両社のコラボを記念し、今回はUnityのお2人とnoteのCXO・深津貴之が、創作におけるコミュニティの大切さについて意見を交わしました。

「半オウンドメディア・半SNS」のクリエイティブなコミュニティを

ーまず、Unityはなぜnoteで情報発信をしようと思ったのでしょう。

田村:本質的なことをUnityユーザーやスタッフが議論できる「半オウンドメディア・半SNS」をnote上につくりたいと考えたからです。たとえば、テクノロジーによって生まれるインパクトのような、大枠の議論をしたいんです。

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田村幸一:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 コミュニティエバンジェリスト。プログラミングほぼ未経験の30歳代後半でUnityを勉強し、個人開発でスマホゲームをリリース。その後もUnityコミュニティで活動を続けて、2018年より同社スタッフとして広報・プロモーション業務に従事。今回のUnityのnoteプロジェクトの編集長的な役割も担う。
note:https://note.com/kouict  Twitter:@kouic_t

もともとはUnityのスタッフが気軽に情報発信できる場をつくる構想でした。しかし、noteをうまく活用すれば、Unityユーザーのみなさんの記事にわたしたちがコメントしたり、UnityユーザーのみなさんとUnityスタッフの記事を一緒にまとめてマガジンをつくったり。双方向のコミュニティのような場所がつくれることに気づいたんです。

深津:ぼくもUnityさんがnoteに来てくれたことはすごく嬉しかったです。自分自身が昔Flashのコミュニティに属していた経験から、創作におけるコミュニティの大切さを感じていたから。Unityはコミュニティが発達したサービスなので、気になっていました。

ー今回つくったのはゲームだけのコミュニティではないのですね。

小林:Unityはゲーム/アプリの開発エンジンですが、自動車、建築、製造業、医療などさまざまな業界のクリエイティブにも使われています。だから、noteでもあらゆるジャンルのテクノロジーの話をしたいと思っています。

UnityはスマホならiOSやAndroid、コンシューマ機ならPS4、Xbox One X、NintendoSwitch、パソコンもWindows、Mac、さらにはVR、ARといろいろなプラットフォームでの開発に対応しています。だから、業界間のコラボレーションにも向いているんです。たとえば、建築業界とVR業界のコラボレーションも、Unityが橋渡し的な役割を担うことができます。

田村:たとえば、最近だと自動運転技術が進歩していますよね。もはやクルマは移動のための道具というよりも、コンピューター。だから、車内でゲームをプレイする可能性も出てきています。Pokémon GOやドラゴンクエストウォークといった位置ゲーも、「クルマのなかだったらどういうものがおもしろいだろう?」というアイデアで、ゲームとクルマのコラボレーションになります。そんな議論もnoteでできると嬉しいです。

小林:そんなおおきな議論がなされるコミュニティを外側からも見てもらうことで、いままでUnityに興味のなかった方にも興味を持ってもらえるのではないかとも考えています。

つくり手とファンは支え合うもの

ー創作においてコミュニティにはどういう価値があるのでしょうか。

深津:創作におけるコミュニティの価値は、まわりのひとから反応をもらえること。また、自分がつくったものをカジュアルに出して意見交換できることだと思います。noteのミッションは「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする」です。とくに「続けられるようにする」にあたって、まわりのひとからの反応や意見交換は創作のモチベーションにつながる大切な役割を果たします。

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小林信行:ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン合同会社 コミュニティエバンジェリスト。原作付きキャラクターゲームの企画&監督を経て2012年に入社。日本的なアニメの表現をUnity上で実現する機能の研究・開発を担当し、リリースされた機能は多くのUnityユーザーに愛用されている。またUnityだけでなくMayaをはじめとする各種3D制作ツールへの造詣も深い。
note:https://note.com/nyaa_toraneko  Twitter:@nyaa_toraneko

小林:まさにおっしゃるとおりですよね。日本でUnityが市民権を得たのも、つくり手がコミュニティの価値を実感したからでした。

かつての日本では、ゲームをつくる際は制作ツールも含めすべて自分たちでゼロから開発することが主流で、長い間ゲームエンジンが根付かなかったんです。また、コンシューマ機用ゲームを開発するための制作ツールは秘密保持契約を結んで使用していたので、何かしらの悩みがあってもひとに相談すらできませんでした。

田村:そんななか、ゲーム開発現場で「Unityを使いたい」と声をあげたのが、個人的にUnityをつかっていたコミュニティのメンバーだったんです。Unityを使うのに秘密保持契約は不要なので、ユーザーは気軽に質問や情報交換ができます。そのコミュニティの魅力が支持され、Unityを使うひとが増えていきました。

小林:あとは、できあがった創作物を使うファンにとっても、コミュニティって大切なんですよ。たとえば、個人や小規模のチームで開発されるインディーゲームは最近つくり手が増えてきましたが、遊ぶひとはまだまだ少ないんです。理由は、つくり手の顔が見えないから。逆につくり手のひととなりがわかると、一定のファンがつきます。

だから自分がつくったものを紹介したり、普段考えていることを語るような記事はすごくおもしろい。Unityユーザーもnoteで発信して、ファンとコミュニケーションをとってもらえたら嬉しいです。

深津:インディーゲームコミュニティの話だと、2000年ごろの黎明期にはクリエイターの竜騎士07さんや、神主さん(=東方ProjectのZUNさん)といった世代は、独自にサイトでコミュニティをつくっていましたよね。ホームページを自作して、掲示板やコミュニティをつくって、日記も載せて、ファンを増やしていった。

小林:そうそう。つくり手とファンは支え合うものです。おたがいの顔が見えないと辛いものがある。そう考えると、顔の見えるコミュニティを自分でもつことにはおおきな意味があります。

深津:自分がつくったものを掲載して、反応が返ってくる。ひとが集まってきて自分のつくるものがよりおもしろくなったり、挫折しそうなところで踏みとどまったりする。noteは、創作とつくり手とファンの間の潤滑油のような役割をしていきたいです。

だれもが創作をはじめ、続けられる未来を共に

ーnoteではどのようなことを発信していく予定ですか?

田村:Unityの哲学にそった発信をしていきたいと思っています。

Unityの哲学はおおきく3つ。1つは「だれでもゲームやコンテンツをつくれる社会にすること」。わたしたちはこれを“開発の民主化”と言っています。

これまで限られたゲーム開発のプロにしか開放されていなかったゲームエンジンを、Unityではだれもが使えるようにしています。しかも、多くの場合は無料で利用できる。こういう取り組みを始めたのはUnityがはじめてなので、歴史的背景などを含めて、思いを伝えていきたいです。

小林:2つ目は「難しい問題を解決すること」。市場が成熟していくなかでゲームは複雑になったり、新しいプラットフォームが次々と出てきたりしています。つくり手が創作に取り掛かる前に、やらなきゃいけない地道な作業はますます増え、問題の難易度も高くなっているんです。

Unityはそんな煩雑な問題をつくり手のかわりに請け負って、つくり手にはクリエイティブなことだけに集中してもらえるようにしたいと考えています。

深津:noteも、だれもが創作をはじめて続けられるためのインフラを目指しているので、開発の民主化やクリエイティブなことに集中できる環境づくりに、非常に共感します。スタンスが似ていますよね。

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深津貴之:note CXO/インタラクション・デザイナー。株式会社thaを経て、Flashコミュニティで活躍。2009年の独立以降は活動の中心をスマートフォンアプリのUI設計に移し、株式会社Art&Mobile、クリエイティブユニットTHE GUILDを設立。noteのCXOなどを務める。執筆、講演などでも精力的に活動。
note:https://note.com/fladdict Twitter:@fladdict

小林:本当にそうですね。

Unityの哲学3つ目は「開発者やクリエイターの成功を支援すること」。ゲームを完成させたら、ゲームを多くのひとにプレイしてもらいたいと考えるのは自然なことですし、ゲーム開発以上に重要で複雑な課題です。つくり手と一緒に、どんな成功体験を目指すべきかを議論したいです。

深津:つくった作品がファンに届くように、noteやUnityが担う役割はおおきいですね。ぼくたちも、クリエイターの作品を広げるためにやるべきことは常に考えています。リコメンド機能でおすすめの記事を出したり、編集部がひとの手でいい記事を見つけたり。

田村:この3つの哲学は、Unityの創業者たちが2005年のUnity誕生から間もなくして語り始めたもので、会社の文化として深く根付いています。日本のスタッフも受け継いでいる彼らの意志を、noteで発信していきたいです。

ーでは、最後に今後の展開について教えてください。

深津:Unityさんと取り組んでいきたいことはさまざまあります。まずはすでにはじまっていますが、Unityさんのnoteでの発信です。

田村:はい。さっそくさまざまな発信をはじめています。8月3日(月)には「世界で通用する面白さとは?」をテーマに、オンライントークイベントを共同開催しましたね。ハイパーカジュアルゲームという分野でGoogle Play全米・日本ランキング1位などの実績を持つエウレカスタジオさんと深津さんに登壇いただきましたが、多くの金言が飛び出したのでnoteでレポートも書きました。

深津:9月からはゲームをテーマにした3つのお題企画も予定しています。2ヶ月おきに連続開催するので、盛り上げていきたいですね。

ほかにも、オンラインのワークショップやゲームアイデアコンテストなんてどうですか?Unityがどんな創作に活かせるのか、使い方や機能をレクチャーしたり、受賞作品を実際のゲーム開発に反映するアイデアコンテストを開催したり。選択肢を狭めずに、いろいろな可能性にチャレンジしていきたいですね。

田村:いいですね!とくにゲームアイデアコンテストは興味深い話だと思いました。

アイデアがおもしろければゲームは絶対におもしろく仕上がる、というわけではないのですが、やはりゲームアイデアを聞いたときに「そのゲームで遊んでみたい!」と思わせるのは、つくるモチベーションの一歩です。そうした刺激がたくさん生まれるコミュニティを一緒につくっていきたいですね。

小林:ワークショップもいいですよね。noteにはテクノロジーの分野以外のクリエイターも多くいらっしゃるでしょう。そんな方々にも、Unityのコミュニティに参加してみてほしいんです。

たとえばマンガを描くときにUnityで背景をつくることもできます。「こんな問題があるけど、どうしたら解決できるかわからない」というときに、Unityなら簡単に解決できるケースがあるので、ワークショップをつうじて創作の可能性を広げてもらえたら嬉しいです。

ーUnityとnoteの共通点を知ることのできた鼎談でした。つくり手とファンが支え合うコミュニティを楽しみにしています!ありがとうございました。


Unityの歴史や成長秘話をまとめたnoteの記事。創業当時の写真なども掲載されていて、当時のダイナミズムが伝わってきます。

取材:田中嘉人

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